傘はなくても「行かな~くちゃ!」なのだ…君に会いに♪ 雨に濡れ
整理整頓が苦手の僕にしては…この時ばかりは
用途別にすべてコンパクトにまとめたフライフィッシングのタックルをワゴンに積んで
さぁ~春に会いに行こう!というより…春に迎えられる自分を想像しながら一路伊豆へ
3月はいろんな形でのLIVEをそれぞれ堪能出来て♪気分も充実していた
お陰で…毎年この季節になるとソワソワしていた気持ちもどこか落ち着いたままだったのだが
ふと空いた時間に巻いたこの時期2週間くらいだけの間に羽化する虫の毛ばりの完成形を手にして
子供のように居ても立ってもいられなくなり…わざわざ天気予報は春の嵐の地域へ向かった
…と言っても僕らフライフィッシャーはこんな日こそ魚の活性が上がるのを経験で知っている
県道を走るトラックなどの運転席からこんな天気の日に渓流で釣りをする者はどう映るのだろう?
川に入る前はさすがに「ちょっとイヤだなぁ」と思ったその雨も…夢中な心のワイパーに拭われ
それが春を告げる雨ということもあっていつの間にか自然に溶け込むナルシストの自分と化す
この日はやはり午後から暴風雨…それでも綺麗な魚に会えたし♪大満足で予定通りの終了
合流してくれた釣り仲間にお礼を言って別れると…もう気持ちは早くも温泉モード
それで3月の忙しさも報われ釣りで冷えた体も温まる…そうなるとやっぱりちょっと一杯が常♪
そこで突然電話しても宿の人は…「今年もお待ちしてました」という笑顔で迎えてくれる
次の日は朝から晴れて…風はまだ冷たくても気持ちのいい空気感の中一人河原で過ごす
何もせず約2時間もここに座っていられるのはこの釣りならではの“儀式”
その間…書きかけの曲のワンフレーズが何度もリフレインするのが不思議だ
釣りはロマンながら…オトナになっても遊びに熱中する自分にどこか負い目でもあるのか?
ところで…渓流で釣りをするなら場所はどこでもいいという訳ではない
有名なポイントにはよく何人かの釣り人がいて…そこに行くと「あ!イセさん」と声をかけてくれる
「ここでは僕もただの1フライマンですよ」と応え…共通の話題に入れてもらう
「今年はまだオオクマを見てないなぁ?」
「昼前にコカゲがちらほら…18番くらいのシマトビも出てた」
「夕方にヒラタがハッチするといいんだけど…」「それってエルモン?」
普通の人が聞けば…それって何語?の会話が通じるのは限られたその世界の中だけ
世に認識された一般的な娯楽よりもいわゆる「マッド」な要素の多いこの釣りに出会ったあまり
みんなそれぞれの仕事や家庭の事情の中で必死に時間をやりくりしてはここに来ているのだと思う
本当に熱中出来るわずかな時間はきっと…それ以外の膨大な日々の中の頑張りから生まれる
さて…この日一人でその待望の瞬間を待っていた先ほどの河原では11時頃になって
「プシュッ!」…水棲昆虫が羽化のため水中から水面に泳ぎ上がるのを待ち構えたアマゴが
それを食べる際に飛沫を飛ばすライズと呼ばれる捕食行動がいよいよ始まる
ここでは前日の同じ時間帯…雨がひどくなる前のわずかなチャンスにもライズがあって
その時は“必殺”のスペント(産卵後等…息絶えた虫が水面に羽を広げた状態)カゲロウの毛ばりで
これぞフライフィッシングという…思い通りの釣りが成立していたことに気を良くしていて
その日早めに宿に帰ってから部屋で巻いた新作のスペントパターンを迷いなく結ぶ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?
「あれ?昨日はイッパツだったのに…」 それがこの遊びの楽しくも難しいところ
それに風向きが不利で糸の形を思い通りに操れないのをなんとか工夫しなければ釣れない
そこで例の「針のサイズが18番のシマトビケラ」の出番!
女の子が見れば「キャー!!」と悲鳴が聞こえそうな…それはまるで小さな蛾のようなルックスでも
魚にとってはこの上なく美味しいブランチになる重要な水棲昆虫なのだ
狙い通りにいったときは…魚はさほど飛沫をあげずにゆっくりと毛ばりをくわえてくれる
耳を澄ませば「ザアーザアー」と川が流れる音…なのにとても静かに感じる時
他に誰もいない河原で一人春を告げる美しいアマゴにしばし見惚れたまま
なぜか?誰に対してか?「ありがとう…」という気持ちが生まれる
今年もここに来られたこと
針に糸を通すのもままならなくなってもまだまだこの遊びの深みにハマれること
あと何年…いつまで自分の足で川を歩けるのか?分からないけど
春のある国に生まれた自分にとって一番いい季節を感じるこの瞬間に感謝したい
そうそう…
還暦を過ぎてますます頼りない足腰のサポートのため♪
川を渡る時などに使うフィッシング用の「杖」が似合うようになって来たし…
危険な河川の増水に対しても一番気をつける習慣があるのは釣り人なので
どうぞ…ご心配なく
shoyan